今回は3次関数の最大値、最小値を求める問題について、関数や定義域に文字を含んだ問題の解き方を解説していきます。「文字が含まれない3次関数の最大最小を求める問題であれば解けるのに、文字が入った途端難しくなる」という悩みを抱えた人は非常に多いので、ここで苦手を克服できれば周りと差をつけることができます。問題演習を通して解き方のコツをつかんでいきましょう。
なお、本記事は実践的な問題演習になっているので、解き方の流れや考え方の基本から理解したい人は、【数2微分】文字を含む3次関数の最大最小(場合分けのコツを分かりやすく解説)をはじめに確認するのがおすすめです!
- 文字を含む問題の解き方のコツを知りたい!
- 分かりやすい解説がほしい!
- 受験対策として自分の実力を確認したい!
【基礎講義】最大・最小となる場所は?
文字が含まれた関数の問題になると、グラフのどの点で最大値あるいは最小値をとるのか、急に考えるのが難しくなります。でも、多くの問題ではだいたい次の2箇所で最大/最小となるので、覚えておくとよいでしょう。
■最大値/最小値をとる場所
以下の2か所を確認せよ!
・定義域の端点(右端 or 左端)
・極値
文字だと分かりにくいと思うので、最小値の場合を例に図で簡単に解説します。下図のようなグラフと定義域(赤色部分)があれば、右端が最小値になります。

このように最小値は基本的に定義域の端っこになります。右端か左端かはグラフの形によりますが、図示すればすぐにわかります。これが1点目の意味です(最大値も同様)。
次に、下図のようなグラフと定義域(赤色部分)の場合はどうでしょう?今度は極小値が定義域内に含まれているので、同然極小値が最小値となります。

このように、定義域内に極値が含まれる場合は、端点ではなく、極値=最大/最小となります。これが2点目の意味です。
では、この基礎知識をもとに、今回は2つの問題を解いていきましょう。
【問題&解説】3次関数の最大値・最小値【文字を含む問題】
【問題1】文字を含む3次関数の最大最小
\(\small a\)を定数として、関数\(\small f(x)=-x^3+3ax\)(\(\small 0≦x≦1\))の最大値とそのときの\(\small x\)の値を求めよ。
■文字を含む3次関数の最大最小の求め方
・STEP1:問題文から描ける範囲でグラフを描く
・STEP2:定義域とグラフの位置関係に着目して場合分け
・STEP3:場合分けした条件ごとに最大値、最小値を求める
3次関数のグラフを描くためにまずは増減表を確認しよう。といっても、問題の3次関数は3乗の係数が負なので、以下のような概形になることから、細かい極値などを確認していければOKだろう。

\begin{equation}
\begin{split}
f'(x)&=-3x^2+3a\\
&=\color{red}{-3(x^2-a) }\quad \cdots①\\
\end{split}
\end{equation}
極値を求めるためには、①がゼロになればよいので
\begin{equation}
\begin{split}
-3( &x^2-a)=0\\
\Rightarrow \quad &x^2=a\\
\end{split}
\end{equation}
ここで、すぐに【\(\small x=\pm \sqrt{a}\)】としないように注意しよう。なぜなら、問題文には「\(\small a\)は定数」としか書かれてないので、負の数である可能性もあるからだ。仮に、\(\small a=-4\)であれば、\(\small x^2=-4 \)は実数解を持たない、つまり解なしなので、\(\small a\)が負なのか0以上なのかで場合分けが必要になる。
(i) \(\small a<0 \)の場合【極値を持たない場合】
\(\small f'(x)=-3x^2+3a=-3(\color{red}{x^2-a})\color{blue}{<0}\)なので、関数\(\small f(x)\)は極値を持たず単調減少する関数となる。
●Appendix
\(\small \color{red}{f'(x)>0}\)…単調増加(接線の傾きが+だから)
\(\small \color{blue}{f'(x)<0}\)…単調減少(接線の傾きが-だから)
\(\small \color{green}{f'(x)=0}\)…極値(接線の傾きがゼロだから)
●OnePoint
途中式赤字の\(\small x^2-a\)は、\(\small a\)が負の場合、\(\small x^2\)は0以上の数(2乗だから)で、\(\small -a\)が正の数になるので、足すと「(0以上の数)+(正の数)=(正の数)」なので全体として正の数になる。そこに、先頭の「-3」が掛け算されることで、(負の数)×(正の数)=(負の数)となるため青字の「\(\small <0\)」の不等号になる。

よって、単調減少(右肩下がり)ということは、\(\small 0≦x≦1\)の範囲では、\(\small x=0\)のときに最大値をとり、その値は\(\small f(0)=-0^3+3a\cdot0=\color{red}0\)である…\(\small (*1)\)。
(ii)\(\small a≧0\)の場合【極値を持つ場合】
この場合は、式①が0になる解を持つことになるので、極値を持つパターン。
具体的に極値を求めると、
\begin{equation}
\begin{split}
-3( &x^2-a)=0\\
\Rightarrow \quad &x^2=a\\
\Rightarrow \quad & \color{red}{x=\pm \sqrt{a}}\\
\end{split}
\end{equation}
3次関数の\(\small x^3\)の係数が負であることから、増減表は下図のようになる。

増減表からグラフの概形は把握できた。また、関数\(\small f(x)=-x^3+3ax\)から\(\small y\) 切片は0(原点を通る)ことに注意してグラフを描いておく。

あとは、グラフと定義域 \(\small 0≦x≦1\)の位置関係から最大値を求めていけばよい。
図からもわかるように、場合分け①は定義域(赤線範囲)の右側に極大値(\(\small x=\sqrt{a}\))が存在するパターンである。よって、このような状況になるためには \(\small 1<\sqrt{a}\)、すなわち、\(\small \color{red}{1<a}\)となる条件が必要である。
このとき、最大値は、\(\small \color{red}{x=1}\)で\(\small f(1)=-1^3+3a\cdot 1=\color{red}{3a-1} \cdots(*2)\)となる。
今度は、定義域(赤線範囲)内に極大値(\(\small x=\sqrt{a}\))が存在するパターン。このような状況となるためには、\(\small 0≦\sqrt{a}≦1\)となっていればよいので、\(\small \color{red}{0≦a≦1}\)が条件となる。
このとき、最大値は、\(\small \color{red}{x=\sqrt{a}}\)で\(\small f(\sqrt{a})=-(\sqrt{a})^3+3a\cdot \sqrt{a}=\color{red}{2a\sqrt{a}} \cdots(*3)\)となる。
以上より、\(\small (*1)~(*3)\)の場合分け結果を整理すると、極値を持たない場合、すなわち\(\small a<0\)の場合は、単調減少のため \(\small x=0\)で最大値0をとる。極値を持つ場合は、\(\small 1<a\)の場合は、\(\small x=1\)で最大値\(\small 3a-1\)、\(\small 0≦a≦1\)の場合は、\(\small x=\sqrt{a}\)で最大値\(\small 2a\sqrt{a}\)となる…(答)。
(解答)
\(\small a<0\)のとき、 \(\small x=0\)で最大値0
\(\small 0≦a≦1\)のとき、\(\small x=\sqrt{a}\)で最大値\(\small 2a\sqrt{a}\)
\(\small 1<a\)のとき、\(\small x=1\)で最大値\(\small 3a-1\)
●OnePoint:場合分けの条件のイコールはどっちに含む?
今回だと3パターンに場合分けして解答していますが、よく不等号のイコールをどちらに含めるべきか?という質問をもらいます。答えとしては、【場合分けしているパターン意味】を踏まえて決めてあげます。
たとえば、今回だと\(\small a<0\)という場合分けは、「極値を持たない場合」という分け方をしています。なので、\(\small a≦0\)のように\(\small a=0\)を含めてしまうと、\(\small f'(x)=0\)が解を持つ → 極値を持つことになり、パターンの前提と合わなくなります。また、議論の中で「\(\small f'(x)<0\)なので単調減少」という部分も、\(\small a=0\)の場合は、\(\small a=0\)で極値を持ってしまうので、厳密には単調減少ではなくなります。
このような矛盾を回避するためにも\(\small a=0\)は「極値を持つ場合」の議論に混ぜてあげるのがよいと判断できるわけです。
【問題2】定義域に文字を含む3次関数の最大最小
関数\(\small f(x)=x^3-2x^2+x\)(\(\small a≦x≦a+1\))の最大値について考える。
(1) \(\small \displaystyle a=\frac{1}{2}\)のときの関数\(\small y\)の最大値と最大値をとる\(\small x\)の値を求めよ。
(2) \(\small x=a+1\)において最大値をとるときの\(\small a\)の値の範囲を求めよ。
[類 慶応大]
■解答のポイント
(2):定義域の境界に注意して丁寧な場合分けが必要!
定義域が\(\small \frac{1}{2}≦x≦\frac{3}{2}\)となり文字がなくなるので、あとは実際に計算していけばOK。ということで、まずはグラフを描くために、増減表を作成していく。関数の極値を求めると
\begin{equation}
\begin{split}
f'(x)=&3x^2-4x+1=0\\
&(3x-1)(x-1)=0\\
&\Rightarrow \space \color{red}{x=\dfrac{1}{3}、1}\\
\end{split}
\end{equation}
よって、\(\small \displaystyle x=\frac{1}{3}\)で極大値\(\small \displaystyle f\left(\frac{1}{3}\right)=\left(\frac{1}{3}\right)^3-2\cdot\left(\frac{1}{3}\right)^2+\left(\frac{1}{3}\right)=\color{red}{\frac{4}{27}}\)、\(\small x=1\)で極小値\(\small f(1)=1^3-2\cdot 1^2+1=\color{blue}0\)をとることから、増減表は以下の通りになる。

あとは冒頭の定義域 \(\small \displaystyle \frac{1}{2}≦x≦\frac{3}{2}\)で最大値を考えると、\(\small \displaystyle f\left(\frac{1}{2}\right)=\frac{1}{8}\)、\(\small \displaystyle f\left(\frac{3}{2}\right)=\frac{3}{8}\)なので、\(\small \displaystyle x=\frac{3}{2}\)で最大値 \(\small \displaystyle \frac{3}{8}\)をとる。

《よくあるミス》グラフを信じすぎない
自分で描いたグラフだけを見て最大・最小を判断するのはミスする可能性があるので要注意!自分では正確に書いているつもりでも、下図のように実際の大小関係と一致しない可能性があるので、しっかり両端の\(\small y\) 座標を求めて比較するようにしよう。
(上図だと右端が\(\small \frac{3}{8}\)で左端よりも大きい値なのに、グラフ上は右端の方が小さく見えてしまっている…)
【(1)解答】
\(\small \displaystyle x=\frac{3}{2}\)で最大値 \(\small \displaystyle \frac{3}{8}\)をとる
\(\small x=a+1\)で最大値をとるということは、図形的には定義域の右端で最大となるということ。そのための条件を考えていこう。
安直に「右端で最大ということは、左端<右端が条件じゃないの?」と思った人は、もう少し慎重に他のパターンも考えてみよう。すると、定義域内に極大値が含まれるような場合は、「左端<右端」となっていても最大値は右端ではなく極大値をとるときになるパターンもあることに気づくだろう。

●OnePoint:パターンを見落とさないコツ
よく解答を確認したときに「あ、このパターン見落としてた…」となる人は、問題を解くときに「このパターンだ!」と気が付いたら一度立ち止まって、「他にないかな?」と考える癖をつけましょう。
他の見落としているパターンがないかを確認するのは意外と難しいですが、個人的なコツとしては、「パターンごとにグラフを描いてみる」ことが効果的です。
今回の問題であれば、定義域をグラフの左側から右側へ動かしていき、常に「左端<右端」となるかを確認すればよいわけです。すると、「定義域に極大値が含まれる場合がある!」と気が付けると思います。
■最大値/最小値をとる場所(再掲)
以下の2か所を確認せよ!
・定義域の端点(右端 or 左端)
・極値
上記のポイントに沿って、\(\small x=a+1\)で最大値をとるパターンを考えると、「極大値が定義域の端点にある場合」と「極大値が定義域外にあり、右端で最大値をとる場合」となる。
まず初めに、「極大値が定義域の端点にある場合」について考える。「左端=極大値」の場合は、\(\small \displaystyle a=\frac{1}{3}\)となるので、グラフを描くとちょうど定義域右端である \(\small \displaystyle x=a+1=\frac{4}{3}\) での\(\small y\) 座標は\(\small \displaystyle \frac{4}{27}\)となり、定義域の両端で最大値をとることが分かる。よって、\(\small \displaystyle \color{orange}{a=\frac{1}{3}\cdots①}\)でも最大値をとることになるので問題の条件を満たす。

次に、「右端=極大値」の場合は、明らかに\(\small \displaystyle x=a+1\)で最大値となるので、そのときの定数\(\small \displaystyle a\)の値は、\(\small \displaystyle a+1=\frac{1}{3} →\color{orange}{ a=-\frac{2}{3} \cdots②}\)。

次に、「極大値が定義域外にあり、右端で最大値をとる場合」について考える。もう少し条件を分解して考えると、「(i)定義域内に極大値を含まない範囲」で、「(ii)左端≦右端となる」ことが\(\small x=a+1\)で最大値をとるための条件になる。ただし(ii)の不等号にイコールを入れているのは、定義域の両端が同じ値(左端=右端)の場合は両端で最大となるので、\(\small x=a+1\)で最大値をとるという問題の条件にも合致するからである。
ここで、考えるパターンがごちゃごちゃしてきたので、一旦今後の解答の流れを整理しておこう。
1. 極大値が定義域の端点にある場合
→既に求めた①+②。
2. 極大値が定義域外にあり、右端で最大値をとる場合
上記の(i)と(ii)の条件を満たす定数\(\small a\)の範囲をそれぞれ求めたあとに、(i)と(ii)を両方満たす範囲(=共通範囲)を求める
3. 「1」と「2」の範囲を合わた範囲が答え
では、「2」以降を引き続き解説していきます。
(i)定義域内に極大値を含まない範囲
定義域の左側に極大値がある場合は、\(\small \displaystyle \color{blue}{\frac{1}{3}<a\cdots③}\)。
定義域の右側に極大値がある場合は、\(\small \displaystyle a+1≦\frac{1}{3} \Rightarrow \color{blue}{a<-\frac{2}{3}\cdots④}\)

(ii)左端≦右端となる
定義域両端での\(\small y\) 座標の値をそれぞれ計算すると、
\begin{equation}
\begin{split}
&f(a)=a^3-2a^2+a、\\
&f(a+1)=(a+1)^3-2(a+1)^2+(a+1)\\
&\qquad \quad \space\space=a^3+a^2
\end{split}
\end{equation}
であることから「左端≦右端」の条件は、
\begin{equation}
\begin{split}
f(a)≦f(a+1&)\\
\Rightarrow \quad a^3-2a^2+a&≦a^3+a^2\\
3a^2-a&≧0\\
a(3a-1)&≧0\\
\Rightarrow \quad \color{green}{a≦0、\frac{1}{3}}&\color{green}{≦a\quad \cdots⑤}\\
\end{split}
\end{equation}
よって、最終結果を整理すると、(i)と(ii)の共通範囲、すなわち【「③または④(青色)」と⑤(緑)の共通範囲】は
$$a<-\frac{2}{3}、\frac{1}{3}<a$$
なので、①、②(黄色)の条件と合わせた範囲(下図の赤色範囲)が最終的な解答になる。

(解答)
\(\small \displaystyle \color{red}{a≦-\frac{2}{3}、\frac{1}{3}≦a}\)
●OnePoint
問題2(2)はシンプルな問題ですが、定義域の両端で最大値がどうなるかを丁寧に見ていかないと解答の不等号にイコールが入るか入らないかでミスが出てしまう問題でした。
特に今回は\(\small \displaystyle a=\frac{1}{3}\)のときに定義域両端で最大値をとっているという部分がポイントでしっかり大小関係を計算しないとミスしてしまいます。
本記事のまとめ
今回は文字を含む3次関数の最大最小問題の解き方について解説しましたがいかがでしたか?単純な解き方の方針以外にも、多くの人がつまづきやすい考え方のポイントもあわせて解説してみました。文字を含む最大最小の問題は「場合分けする力」が試される問題として受験頻出分野になっているので、今回の問題で躓いた人は、考え方をしっかり理解したうえで、参考書などを通して解けるようになるまで繰り返し演習するとよいでしょう。
最後に今回のポイントだけ簡単にまとめておきます。
■最大値/最小値をとる場所
以下の2か所を確認せよ!
・定義域の端点(右端 or 左端)
・極値
■文字を含む3次関数の最大最小の求め方
・STEP1:問題文から描ける範囲でグラフを描く
・STEP2:定義域とグラフの位置関係に着目して場合分け
・STEP3:場合分けした条件ごとに最大値、最小値を求める
では、今回はここまでです。お疲れ様でした!
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