今回は、はさみうちの原理・追い出しの原理を利用して極限を求める問題について解説していきます。
はさみうちの原理は公式自体は簡単ですが、意外と実際に問題を解こうとすると、使いどころが分からないという経験はありませんか?
そんな悩みを持っている人向けに、この記事でははさみうちの原理を使った基本問題から受験対策で頻出の少し応用的な問題まで徹底解説していきます。
また、知名度は少し下がりますが、はさみうちの原理と合わせて押さえておきたい追い出しの原理について最後に紹介しますので、ぜひ併せてチェックしておきましょう!
- はさみうちの原理、追い出しの原理とは何か知りたい人
- はさみうちの原理を使う問題の見極め方法を知りたい人
- はさみうちの原理を使った極限の問題を解きたい人
- はさみうちの原理を利用した大学入試頻出の問題パターンを演習したい人
本記事の要点
はさみうちの原理・追い出しの原理を利用した極限の求め方について、重要ポイントは以下の通り。
☆重要Point☆
・はさみうちの原理を利用した極限の問題は、不等式証明パターン、隠れ不等式パターン、2項定理パターンの3種類が受験必須の典型問題。
・はさみうちの原理はどんな値でサンドイッチするかが重要。
そのためには、ときには極限を感覚的に推測する力も必要。
・追い出しの原理は、発散する無限級数和の問題で使うのが効果的。
では、実際に問題を解きながら理解を深めていきましょう!
【問題&解説】はさみうちの原理・追い出しの原理を利用した極限の問題
問題を解く前にはさみうちの原理を使う問題の見分け方を知りたい人は、講義2を先にチェックしておきましょう!
【問題1】不等式証明とはさみうちの原理
(1)\(\small x>0\)のとき、\(\small 1<\sqrt{1+x}<1+x\) が成り立つことを示せ。
(2)\(\small \displaystyle \lim\limits_{n\to\infty}\frac{1}{n}\sum\limits_{k=1}^n \sqrt{1+\frac{k}{n^2}}\) の値を求めよ。
[群馬大]
・(1)不等式の証明は、(大)-(小)\(\small >0\)を示すのが定石
・(2)不等式が活用できる形になるように式の内側から順番に変形すべし!
※本問であれば「和→1/n→極限」の順番
不等式の左半分 \(\small 1<\sqrt{1+x}\)について、不等式の常套手段「(大)-(小)>0」を示すために引き算しても、\(\small \sqrt{1+x}-1\)となりルートが邪魔で計算が進まない…。
なので、\(\small 1<\sqrt{1+x}\)の両辺を2乗した形 \(\small 1<1+x\)が成り立つことを証明できればOK(両辺が正であれば2乗した不等式も成り立つので)。
● \(\small 1<\sqrt{1+x}\)の証明
\(\small (1+x)-1=x>0\)より、\(\small 1+x>1\)。
よって、\(\small \sqrt{1+x}>1\)…①も成り立つ。
同様に不等式の右半分についても証明していく。
● \(\small \sqrt{1+x}<1+x\)の証明
両辺を2乗した\(\small 1+x<(1+x)^2\)が成り立つことを示す。
\begin{split}
\small (1+x)^2-(1+x) & \small =(1+2x+x^2)-1-x\\
& \small =x^2+x\\
& \small =x(x+1)\\
\end{split}
ここで\(\small x>0, x+1>0\)より、\(\small x(x+1)>0\)。
よって、\(\small 1+x<(1+x)^2\)が成り立つので、\(\small \sqrt{1+x}<1+x\)…②も成り立つ。
①,②を合体させることで、\(\small 1<\sqrt{1+x}<1+x\)となることから題意は示された。
求める極限はルートを含む数列の無限和となっており、当然すぐに極限がとれる形ではないので、(1)の不等式をうまく活用する方針で考える。
\(\small \displaystyle \frac{k}{n^2}>0\)より、(1)で\(\small \displaystyle x=\frac{k}{n^2}\)とおくことで
$$\small 1<\sqrt{1+\frac{k}{n^2}}<1+\frac{k}{n^2}\quad \cdots①$$
が成り立つ。
※本問であれば\(\small x>0\)を満たすことを確認
ここから不等式の真ん中部分が(2)の形になるように1つずつ順番に変形していく。
まずは①について、\(\small k=1~n\)までの和をとることで、
\begin{split}
& \small \sum_{k=1}^n1<\sum_{k=1}^n \sqrt{1+\frac{k}{n^2}}<\sum_{k=1}^n\left( 1+\frac{k}{n^2} \right)\quad \cdots②\\
\end{split}
ここで、一番左側の和は
\begin{split}
& \small \sum_{k=1}^n 1=n
\end{split}
一番右側の和は
\begin{split}
& \small \sum_{k=1}^n\left( 1+\frac{k}{n^2} \right)\\
&\small =\sum_{k=1}^n 1+\frac{1}{n^2} \sum_{k=1}^n k\\
&\small =n+\frac{1}{n^2}\cdot \frac{1}{2}n(n+1)\\
&\small =n+\frac{n^2+n}{2n^2}\\
\end{split}
より、②は
\begin{split}
& \small n<\sum_{k=1}^n \sqrt{1+\frac{k}{n^2}}<n+\frac{n^2+n}{2n^2}\\
\end{split}
両辺を\(\small \displaystyle \frac{1}{n}\)倍して\(\small n\to\infty\)の極限をとることで
\begin{split}
& \small \lim\limits_{n\to\infty} 1≦\lim\limits_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n \sqrt{1+\frac{k}{n^2}}≦\lim\limits_{n\to\infty} \frac{1}{n}\left(n+\frac{n^2+n}{2n^2}\right)\\
\Leftrightarrow \space & \small 1≦\lim\limits_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n \sqrt{1+\frac{k}{n^2}}≦1+\color{#ef5350}{\lim\limits_{n\to\infty}\frac{n^2+n}{2n^3}}\quad \cdots③\\
\end{split}
赤色部分の極限は
\begin{split}
&\small \lim\limits_{n\to\infty}\frac{n^2+n}{2n^3}\\
&\small =\lim\limits_{n\to\infty}\left(\frac{1}{2n}+\frac{1}{2n^2}\right)\\
&\small =0\\
\end{split}
となることから、③は
\begin{split}
& \small \color{#ef5350}{1≦}\lim\limits_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n \sqrt{1+\frac{k}{n^2}}\color{#ef5350}{≦1}\\
\end{split}
となるので、はさみうちの原理から
\begin{split}
& \small \lim\limits_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n \sqrt{1+\frac{k}{n^2}}=\color{red}{1\quad \cdots【答】}\\
\end{split}
【問題2】三角関数とはさみうちの原理
次の極限を求めよ。
(1)\(\small \displaystyle \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin 3x}{x}\)
(2)\(\small \displaystyle \lim\limits_{x\to0}x\sin\frac{1}{x}\)
・三角関数のはさみうちは求める式を絶対値ではさむのが定石!
※そうすると余計な論証をしなくて済むよ
三角関数の極限の公式 \(\small \displaystyle \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1\)の形に似ているので、この公式が使える形にうまく変形していく。
\begin{split}
\small \displaystyle \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin 3x}{x} & \small =\color{#ef5350}3 \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin 3x}{\color{#ef5350}3x}\quad \cdots ①\\
\end{split}
ここで\(\small 3x=t\)とおくと、\(\small x\to0\)のとき \(\small t\to0\)より
\begin{split}
&\small \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin \color{#ef5350}{3x}}{ \color{#ef5350}{3x}}\\
&\small = \lim\limits_{t\to0}\frac{\sin \color{#ef5350}t}{ \color{#ef5350}t}\\
& \small =1\\
\end{split}
となるので、①は
\begin{split}
\small \displaystyle 3 \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin 3x}{3x}=\color{red}{3\quad \cdots【答】}\\
\end{split}
≪\(\small \displaystyle \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1\)の公式の覚え方≫
この公式の意味は、\(\small x\)が0の付近において\(\small y=\sin x\)と\(\small y=x\)が一致するということ。グラフをイメージすると分かりやすい。
一見すると、
$$\small \lim\limits_{x\to0}x\sin\frac{1}{x}=\lim\limits_{x\to0}\frac{\sin\frac{1}{x}}{\frac{1}{x}}$$
と変形することで、(1)同様に、 \(\small \displaystyle \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1\)の公式が使えそうだが、\(\small \displaystyle \frac{1}{x}=t\)とおいて公式に近づけようとすると、\(\small x\to 0\)では、\(\small t\to\infty\)(\(\small \frac{1}{0}\)は無限大)となるので、求める極限は、
$$\small \lim\limits_{x\to0}\frac{\sin\frac{1}{x}}{\frac{1}{x}}=\lim\limits_{t\to\infty}\frac{\sin t}{t}$$
となり、よ~く見ると\(\small t\to\infty\)の部分が異なるため公式が使えない。また、\(\small t\)が無限大のときの具体的な\(\small \sin t\)の値も分からない…。
ただ唯一分かることは、\(\small \sin t\)の取り得る値の範囲が \(\small -1≦\sin t≦1\)であるということ。ふむふむ…、勘が鋭い人であればもうお気づきの通り、不等式が出てきて極限ということは、はさみうちの原理を利用しない手はないやるしかない、ということで、早速はさみうちをしていきましょう!
\(\small -1≦\sin t≦1\)の真ん中部分を\(\small \displaystyle \lim\limits_{t\to\infty}\frac{\sin t}{t}\)に近づけるために、両辺を\(\small t\)で割りたいところですが、ここで論証ポイントとして注意しなくてはいけないのが、「① \(\small t\neq0\)であることを述べること」と「②\(\small t\)の正負によって不等号の向きが変わってしまう」という点です。
②は\(\small t>0\)の場合と、\(\small t<0\)の場合に場合分けしてもよいのですが、論証の手間がかかるため、絶対値で評価するという小技を使うのが一般的です。
\(\small t \neq 0\)として、
\begin{split}
\small 0≦& \small |\sin t|≦1\\
\small 0≦& \small \left|\frac{\sin t}{t}\right|≦\frac{1}{|t|}\\
\small 0≦\lim\limits_{t\to\infty} & \small \left|\frac{\sin t}{t}\right|≦\lim\limits_{t\to\infty}\frac{1}{|t|}\quad \cdots ①\\
\end{split}
ここで、一番右側の極限は、
\begin{split}
\small \lim\limits_{t\to\infty}\frac{1}{|t|}=0\\
\end{split}
より、結局①は
\begin{split}
\small 0≦\lim\limits_{t\to\infty} \left|\frac{\sin t}{t}\right|≦0\\
\end{split}
となるので、はさみうちの原理より
$$\small \lim\limits_{t\to\infty} \left|\frac{\sin t}{t}\right|=0$$
(絶対値)=0ということは絶対値の中身も0(\(\small |A|=0 ⇒ A=0\))になるので、\(\small \displaystyle \lim\limits_{t\to\infty} \frac{\sin t}{t}=0\)…【答】。
●補足
本問の極限値は、分子の\(\small \sin t\)は-1~1の間の値だが、分母は無限大に大きくなるので、感覚的にも0になるということはある程度予測できます。極限の結果を計算したらその答えが妥当そうかを感覚と照らし合わせたり、問題を解く前にこのくらいになりそうだなという目星をつけられるとどんな不等式でサンドイッチするかのヒントになったりします。
【問題3】ガウス記号とはさみうちの原理
\(\small \displaystyle \lim\limits_{n\to\infty} \frac{1}{n}\left[\frac{n}{3}\right]\)の極限を求めよ。
ただし、\(\small [x]\)は\(\small x\)を超えない最大の整数とする。
・覚えてなくても本問のように説明がつくことが多いが、
説明だけだと正直分からんって感じなので、覚えておくのが得策。
・具体例で覚えておくと分かりやすい。
\(\small [1]=1\)、\(\small [1.2]=1\)、\(\small [1.999\cdots ]=1\)、\(\small [2]=2\cdots\)
みたいな感じ。
ガウス記号の定義から、\(\small \displaystyle \frac{n}{3}-1<\left[\frac{n}{3}\right]≦\frac{n}{3}\)を満たすので、\(\small n>0\)で不等式全体を割って求める式の形に変形していくと、
\begin{split}
\small \frac{1}{n}\left(\frac{n}{3}-1\right) &\small <\frac{1}{n}\left[\frac{n}{3}\right]≦\frac{n}{3n}\\
\small \Leftrightarrow \space \frac{1}{3}-\frac{1}{n} &\small <\frac{1}{n}\left[\frac{n}{3}\right]≦\frac{1}{3}\\
\small \Leftrightarrow \space \lim\limits_{n\to\infty}\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{n}\right) &\small ≦\lim\limits_{n\to\infty}\frac{1}{n}\left[\frac{n}{3}\right]≦\frac{1}{3}\\
\end{split}
一番左側の極限は、
\begin{split}
\small \lim\limits_{n\to\infty}\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{n}\right)&\small =\frac{1}{3}-0\\
&\small =\frac{1}{3}\\
\end{split}
となるので、
\begin{split}
&\small \frac{1}{3}≦\lim\limits_{n\to\infty}\frac{1}{n}\left[\frac{n}{3}\right]≦\frac{1}{3}\\
\end{split}
はさみうちの原理より、\(\small \displaystyle \lim\limits_{n\to\infty}\frac{1}{n}\left[\frac{n}{3}\right]=\color{red}{\frac{1}{3}}\)…【答】.
【問題4】2項定理とはさみうちの原理①
\(\small \displaystyle \lim\limits_{n\to\infty} \frac{n^3}{2^n}\)の極限を求めよ。
・分数の極限は分母と分子の発散スピードから\(\small 0\) or \(\small \infty\)のどちらになりそうか目星をつけることも大事(発散スピードって何?と思った人は、講義3を参照)
・\(\small n\)乗が出てきて式変形に困ったら、2項定理が使えないか考えよう
分母分子の発散スピードを考えると、\(\small n\to\infty\)の極限では全体としては0に収束することが推測できるので、分母を2項定理で展開して0に収束することを示す方針で考える。
2項定理より
\begin{split}
\small 2^n &\small =\color{#ef5350}{(1+1)^n}\\
& \small \color{#ef5350}{={}_n C_{0}+{}_n C_{1}+{}_n C_{2}+\cdots+{}_n C_{n}}\\
& \small =1+n+\frac{n(n-1)}{2}+\frac{n(n-1)(n-2)}{6}\\
& \small \qquad +\frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{24}+\cdots\\
& \small >\frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{24}\\
\end{split}
最後の不等号は、2項定理で展開したたくさんの項の足し算うち、第5項目だけを残したので小さくなるということ。
●補足
第5項目(\(\small n^4\)の項)だけ残した理由について補足。
冒頭の発散スピードのところで見極めた通り、今回の極限は0に収束することが予測できるため、分子の\(\small n^3\)よりも発散スピードが大きい項を分母に残しておく必要があります。
なので、4乗の項だけ残してます(なので計算が面倒でなければ5乗以上の項だけ残しても同じ論証ができる)
式がごちゃごちゃしたので、要約すると
\begin{split}
\small 2^n > \frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{24}\quad \cdots①\\
\end{split}
がという不等式が得られた。あとは、問題にある極限の形に近づくように式変形していく。
\(\small n \neq 0\)として、①の逆数をとると
\begin{split}
\small \frac{1}{2^n} < \frac{24}{n(n-1)(n-2)(n-3)}\\
\end{split}
左辺について、\(\small \displaystyle 0<\frac{1}{2^n}\)であることは自明なので(実際に適当な値を\(\small n\)を代入してみると感覚的に分かると思う)、
\begin{split}
\small 0<\frac{1}{2^n} < \frac{24}{n(n-1)(n-2)(n-3)}\\
\end{split}
\(\small n\to\infty\)の極限を考えているので\(\small n>0\)で考えると\(\small n^3>0\)なので
\begin{split}
\small 0<\frac{n^3}{2^n} < \frac{24n^3}{n(n-1)(n-2)(n-3)}\\
\end{split}
不等式全体に対して\(\small n\to\infty\)の極限をとると
\begin{split}
\small 0≦\lim\limits_{n\to\infty}\frac{n^3}{2^n} ≦\lim\limits_{n\to\infty} \frac{24n^3}{n(n-1)(n-2)(n-3)}\\
\end{split}
一番右辺の極限は
\begin{split}
&\small \lim\limits_{n\to\infty} \frac{24n^3}{n(n-1)(n-2)(n-3)}\\
&\small =\lim\limits_{n\to\infty} \frac{1}{n}\frac{24}{1\left(1-\frac{1}{n}\right)\left(1-\frac{2}{n}\right)\left(1-\frac{3}{n}\right)}\\
&\small =0\cdot \frac{24}{1\left(1-0\right)\left(1-0\right)\left(1-0\right)}\\
&\small =0
\end{split}
より、
\begin{split}
\small 0≦\lim\limits_{n\to\infty}\frac{n^3}{2^n} ≦0\\
\end{split}
よって、はさみうちの原理より、\(\small \displaystyle \lim\limits_{n\to\infty}\frac{n^3}{2^n}=0\)…【答】.
【問題5】2項定理とはさみうちの原理②
(1)自然数\(\small n\)に対して不等式 \(\small \displaystyle \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n>\sqrt{n}\)が成り立つことを示せ。
(2)\(\small \displaystyle \lim\limits_{n\to\infty} \sqrt[n]{n}\)を求めよ。
[九州工業大 改題]
・(1)の不等式証明は、\(\small n\)乗を展開するときに2項定理を活用する。
●2項定理
$$\small (a+b)^n={}_n C_{0}a^0b^n+{}_n C_{1}a^1b^{n-1}+{}_n C_{2}a^2b^{n-2}+\cdots+{}_n C_{n}a^nb^{0}$$
不等式の証明は(大)-(小)>0を示すのが定石。今回であれば、\(\small \displaystyle \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n-\sqrt{n}\)を計算して0より大きくなっていることを示せればOK。
\begin{split}
&\small \color{#ef5350}{\left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n} – \sqrt{n}\\
&\small = \color{#ef5350}{1+{}_n C_{1}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)+{}_n C_{2}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^2+\cdots}\\
&\small \quad \color{#ef5350}{+{}_n C_{n}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n}- \sqrt{n}\\
&\small = 1+\frac{n}{\sqrt{n}}+{}_n C_{2}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^2+\cdots\\
&\small \quad +{}_n C_{n}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n- \sqrt{n}\\
&\small = 1+ \color{#ef5350}{\sqrt{n}}+{}_n C_{2}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^2+\cdots\\
&\small \quad +{}_n C_{n}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n- \color{#ef5350}{\sqrt{n}}\\
&\small = 1+{}_n C_{2}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^2+\cdots+{}_n C_{n}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n\\
\end{split}
第2項目以降の各項はいずれも正なので、和全体としても正となるため
\begin{split}
\small 1+& \small {}_n C_{2}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^2+\cdots+{}_n C_{n}\left(\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n >0\\
& \small \Leftrightarrow \space \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n – \sqrt{n} >0\\
& \small ∴ \space \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n > \sqrt{n}\\
\end{split}
よって、題意は示された。
(1)で示した不等式を問題の極限の形に変形していく。
\(\small \sqrt[n]{n}=(n)^{\frac{1}{n}}\)であることに注意すると、まず(1)の不等式の両辺を2乗して右辺のルートを外すと
\begin{split}
& \small \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^n > \sqrt{n}\\
& \small \Leftrightarrow \space \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^{2n} > n\\
\end{split}
この状態で、両辺を\(\small \displaystyle \frac{1}{n}\)乗してあげると
\begin{split}
& \small \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^{2n} > n\\
& \small \Leftrightarrow \space \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^{2} > n^{\frac{1}{n}}\\
\end{split}
\(\small n\)は自然数なので、\(\small 1≦n\space \Leftrightarrow \space 1≦ \sqrt[n]{n}\)であることから、
\begin{split}
\small 1≦ \sqrt[n]{n}<\left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^{2}\\
\end{split}
よって、はさみうちの原理から
\begin{split}
\small 1 ≦ \lim\limits_{n\to\infty} \sqrt[n]{n} ≦ \lim\limits_{n\to\infty} \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^{2}\\
\end{split}
一番右側の極限は、
\begin{split}
&\small \lim\limits_{n\to\infty} \left(1+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)^{2}\\
&\small =\left(1+0\right)^{2}\\
&\small =1\\
\end{split}
より、
\begin{split}
\small 1 ≦ \lim\limits_{n\to\infty} \sqrt[n]{n} ≦ 1\\
\end{split}
よって、\(\small \lim\limits_{n\to\infty} \sqrt[n]{n} =1\)…【答】.
【問題6】追い出しの原理と極限
\(\small \displaystyle \lim\limits_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{3}}+\cdots+\frac{1}{\sqrt{n}}\right)\)の極限を求めよ。
・はさみうちの原理のついでに紹介しましたが、正直あんまり意識して使う問題もないので数列の無限和で使う程度と思っておけばよいでしょう。
求める極限の数列の和をシグマを使ってあらわすと
\begin{split}
\small 1+\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{3}}+\cdots+\frac{1}{\sqrt{n}}=\sum_{k=1}^n\frac{1}{\sqrt{k}}\quad \cdots①\\
\end{split}
となるが、数列の和の公式の範囲ではこれ以上計算を進めることができない。
そこで、無限和であることから、和が発散するかどうかを確認しておこう。
①のすべての項を、和のなかで最も値が小さい\(\small \displaystyle \frac{1}{\sqrt{n}}\)に置き換えてあげると、もともとの和よりも小さい値になるので
\begin{split}
&\small \color{#ef5350}{1+\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{3}}}+\cdots+\frac{1}{\sqrt{n}}\\
& \quad \small ≧\small \color{#ef5350}{\frac{1}{\sqrt{n}}+\frac{1}{\sqrt{n}}+\frac{1}{\sqrt{n}}}+\cdots+\frac{1}{\sqrt{n}}\\
& \quad \small =\frac{1}{\sqrt{n}}\times n\\
& \quad \small =\sqrt{n}\\
\end{split}
●補足
解説した置き換えで和が小さくなる理由がイメージしにくい人向けに、もっとシンプルな例で説明するならば、
$$\small 5+4+3+2+1≧1+1+1+1+1$$
が成り立つよってこと。
1~5の和の全項を、和の中で一番小さい項である1に全部置き換えちゃえば、置き換えた後の和は元の和よりも小さくなるっしょ、ということです。
今回の問題では、各項に分数やルートが含まれているので大小関係が分かりにくいですが、一番小さい項である\(\small \displaystyle \frac{1}{\sqrt{n}}\)で置き換えています。
要約すると、
\begin{split}
\small 1+\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{3}}+\cdots+\frac{1}{\sqrt{n}} ≧\sqrt{n}\\
\end{split}
両辺を\(\small n\to\infty\)の極限をとると
\begin{split}
\small \lim\limits_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{3}}+\cdots+\frac{1}{\sqrt{n}}\right) ≧ \lim\limits_{n\to\infty} \sqrt{n}\\
\end{split}
ここで、右辺は
\begin{split}
\small \lim\limits_{n\to\infty} \sqrt{n}=\infty\\
\end{split}
なので、
\begin{split}
\small \lim\limits_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{3}}+\cdots+\frac{1}{\sqrt{n}}\right) ≧ \infty\\
\end{split}
となるので、追い出しの原理より、
\begin{split}
\small \lim\limits_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{3}}+\cdots+\frac{1}{\sqrt{n}}\right) = \infty\space \cdots \mathbf{【答】}\\
\end{split}
【徹底解説】はさみうちの原理・追い出しの原理
【講義1】はさみうちの原理とは
はさみうちの原理とは、極限を同じ値でサンドイッチすると中身も同じ値になるよという原理です。

数式的でかくならこんな感じ。
●はさみうちの原理とは
不等式
$$\small a_n≦c_n≦b_n$$
があったときに、\(\small \lim\limits_{n\to\infty} a_n=\alpha\)、\(\small \lim\limits_{n\to\infty} b_n=\alpha\)だった場合、
$$\small \lim\limits_{n\to\infty}c_n=\alpha$$
つまり、不等式の両サイドが\(\small n\to\infty\)で同じ値になるとすると、真ん中の値の極限もその値になるよね、というわけです。まぁ、そりゃそうじゃん?って感じですね。
はさみうちの原理は定義自体は覚える必要はないので、この考え方だけ理解しておきましょう。
●ちょっと補足
はさみうちの原理を使う問題を見ていると、
\begin{split}
\small a_n &\small<c_n<b_n\\
\end{split}
のように、不等号がイコールを含んでいない場合でもはさみうちの原理が使われていることがあります。
細かい話をすると大学数学の範囲になってしまうのでここでは感覚的に解説しまが、そもそも極限というのは、「限りなくその値に近づけたときの値」だったので厳密に同じ値になる必要はないので、イコールがない場合でも問題なく使えます。
【講義2】はさみうちの原理を使う問題の見分け方
はさみうちの原理を使う問題は大きく3パターンあります。
1つ目が、不等式の証明問題のあとに極限を求める問題がある場合。
えぐい感じの不等式証明の問題があって、最後にラスボスのごとく君臨している極限の問題があったらそれはほぼ間違えなくはさみうちの原理を使う問題です。大体、各小問は最後の問題を解くための誘導になっているので、受験生にはバレバレですね。証明問題が解けなくても最後の極限だけは解いておきましょう。
2つ目が、隠れ不等式パターンです。これは、問題文中には明示されていない大小関係を利用することで、はさみうちすることができる問題です。具体的には、三角関数の\(\small -1≦\sin x≦1\)やガウス記号の\(\small n-1<[n]≦n\)などの代表例を押さえておきましょう。
最後3つ目は、2項定理利用パターンです。これは、たぶん初見だと気づけないので、ちょっと特殊パターンとして覚えておきましょう。具体的な問題は問題4で解説しています。
まとめると、はさみうちの原理を使う問題では、基本的に不等式が出てくるというのが思い付きのヒントになります。
【講義3】極限を推測することも大事
はさみうちの原理の問題は、基本的には不等式に沿って両端の極限を求めていけば解くことができますが、場合によってはどんな値ではさみこめばいいのかわかんないなぁという状況に陥ることがあります(特に2項定理を利用する問題)。
そんなときに役立つのが感覚的に極限を推測する力です。かっこよく言いましたが、分数型の極限を求めるときに発散スピードをみて0に収束しそうなのか、\(\small \infty\)に発散しそうなのかを見てあげるというのが結構効果的です。
関数の増加速度は関数の種類によってある程度決まってます。
ここでは、代表的なものを覚えておけばOKです。
①多項式は\(\small n\)乗部分が大きくなるほど発散スピードが速い
例)\(\small n^2+3n+1\)よりも\(\small n^5-n+5\)の方が早く発散する
②多項式より指数関数の方が発散スピードが速い
例)\(\small n^5-n+5\)よりも\(\small 2^n\)の方が早く発散する
発散スピードを知っていると分数の極限を推測するときに効果的です。
たとえば、問題4であれば、分子が多項式で分母が指数関数なので、分母の方が発散スピードがはやい(すぐに無限大になる)ので、全体としては0に収束しそうだということが分かります。
このことが分かると、0に収束させるためには、はさみうちの原理で0で押さえ込めればよいことが分かります。さらに、2項定理で押さえ込むときにも、分子が3次式ということは分母が3乗よりも大きな乗数で押さえ込めれば全体として0に収束できることから、4乗の項まで2項定理で展開してあげればよさそうだ、という目星をつけることができます。
この考え方は極限界隈(?)では定番(解答には書けないけど…)なので、検算にも使えるので覚えておいても損はないと思います。
【講義4】追い出しの原理
●追い出しの原理とは
不等式\(\small a_n≦b_n\)で、\(\small \lim\limits_{n\to\infty}a_n=\infty\)のとき、\(\small \lim\limits_{n\to\infty}b_n=\infty\)となる。
\(\small b_n\)の方が大きな値になるようなときに、\(\small a_n\)が無限大に発散しているなら、当然\(\small b_n\)も無限大に発散してるよね、ということ。
数直線上で、大きい数が右側に追いやられる様子から追い出しという名前が付いたみたい。

はさみうちの原理のように宣言して使うほどの原理ではないですが、使いどころとしては、問題5にあるような無限級数の和が発散することを示すときに有効です。
本記事のまとめ
はさみうちの原理はイタリヤやロシアでは「二人の警察官の定理」と呼ばれているようで、はじめは面白いなぁと思ってたんですが、冷静になって考えると、全然意味わからんネーミングでした。
以上です。本日もお疲れ様でした!
コメント