今回は無限級数の問題について徹底解説していきます。
そもそも無限級数って何だったかというと、正確さを無視してあえて簡単に言ってしまえば、数列が無限個足し算された式のこと(詳細は、【講義1】無限級数ってなに?を参照)。
言葉だと分かりにくいと思うので、視覚的に表現すると
$$\small a_1+a_2+a_3+\cdots\quad (\mathsf{無限に足し算が続く})$$
みたいな式のことです。
無限級数の計算問題は、部分和がどうのこうの…とか、括弧があるかないかでどうのこうの…とか細かい部分の論証が地味に難しいです。
そこで、本記事では無限級数の基本的な解き方と考え方の解説から受験必須のテクニカルな問題までゴリっと解説していくので、ぜひ最後までチェックしていきましょう!
- 無限級数とはなにかを知りたい人
- 無限級数の収束条件、発散条件について知りたい人
- 部分和の計算のコツを知りたい人
- 無限級数の受験対策として、応用的な問題の解き方を知りたい人
本記事の要点
無限級数の計算問題の演習&解説に入る前に、本記事の要点をまとめておきます。
☆重要Point☆
・無限級数の計算は、部分和の極限として考えろ!
・無限級数の収束条件は、部分和の極限が特定の1つの値に定まること。
・無限級数の発散条件は、①部分和の極限が無限大、②部分和が1つの値に定まらない、③無限項目が0にならない。
では、この要点を頭の片隅に置きながら、実際の問題を通して理解を深めていきましょう。
【問題&解説】無限級数の計算問題
【問題1】分数の無限級数(難易度:★☆☆)
\(\small \displaystyle \sum_{n=2}^\infty \frac{1}{n^2-1}\)の収束、発散について調べ、収束する場合はその和を求めよ。
(詳細は、【講義2】無限級数で部分和を考える理由を参照)
・各項が分数の無限級数は、部分分数分解をして中身を打消し!
※部分分数分解については【講義3】部分分数分解(分数の無限級数)を参照
・部分和が収束すれば無限級数自体も収束する
部分和を\(\small \displaystyle S_k=\sum_{n=2}^k \frac{1}{n^2-1}\)とする。
分母が\(\small n^2-1=(n-1)(n+1)\)と積の形に因数分解できるので、1つの分数を2つの分数に部分分数分解できる。
\begin{split}
\small \displaystyle \sum_{n=2}^k \frac{1}{n^2-1} &\small = \sum_{n=2}^k \color{#ef5350}{\frac{1}{(n-1)(n+1)} }\\
&\small = \sum_{n=2}^k \color{#ef5350}{\frac{1}{2}\left(\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n+1}\right) }\\
&\small = \frac{1}{2}\left[\sum_{n=2}^k \frac{1}{n-1}-\sum_{n=2}^k \frac{1}{n+1}\right]\\
\end{split}
1つの分数の和を2つの分数の和に分解できたので、あとは各項の和を具体的にいくつか書き出してみて消える項を確認していく。
\begin{split}
\small \displaystyle \frac{1}{2}&\small \left[\color{#ef5350}{\sum_{n=2}^k \frac{1}{n-1}}-\color{#5c6bc0}{\sum_{n=2}^k \frac{1}{n+1}}\right]\\
&\small = \frac{1}{2} \left[\color{#ef5350}{\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\cdots+\frac{1}{k-2}+\frac{1}{k-1}\right)}\right.\\
&\small \qquad \left. – \color{#5c6bc0}{\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\cdots+\frac{1}{k}+\frac{1}{k+1}\right)}\right]\\
\end{split}

\begin{split}
\small ∴\space S_k=\frac{1}{2} \left(1+\frac{1}{2}-\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)\quad\cdots①
\end{split}
●補足
部分分数分解したあとの中身の項の消込は、下記のように計算してもよいが消込の法則性が若干分かりにくく、結局どの項が残るのか考えにくい…。
\begin{split}
&\small \frac{1}{2}\sum_{n=2}^k\left[\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n+1}\right]\\
&\small \quad =\frac{1}{2}\left[\left(1-\frac{1}{3}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{1}{4}\right)+\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{5}\right) + \cdots \right]\\
\end{split}
そのため、解説に記載したように分数ごとに具体的な和を書き出す方が、消し込む法則を確認しやすくておすすめである。
部分和を\(\small \displaystyle S_k=\sum_{n=2}^n \frac{1}{n^2-1}\)としていたので、求める無限級数は、
\begin{split}
\small \lim_{k\to\infty} S_k =\sum_{n=2}^\infty \frac{1}{n^2-1}\\
\end{split}
より、①の結果から
\begin{split}
\small \lim_{k\to\infty} S_k &\small =\lim_{k\to\infty} \frac{1}{2} \left(1+\frac{1}{2}-\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)\\
&\small =\frac{1}{2} \left(1+\frac{1}{2}-0-0\right)\\
&\small =\frac{3}{4}
\end{split}
よって、部分和\(\small S_k\)が収束することから無限級数も収束し、その収束値は\(\small \displaystyle \frac{3}{4}\)…【答】
【問題2】括弧に注意すべき無限級数(難易度:★★☆)
次の無限級数の収束、発散について調べ、収束する場合はその和を求めよ。
(1)\(\small \displaystyle \left(1-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{3}{4}\right)+\left(\frac{3}{4}-\frac{5}{6}\right)+\cdots\)
(2)\(\small \displaystyle 1-\frac{1}{2}+\frac{1}{2}-\frac{3}{4}+\frac{3}{4}-\frac{5}{6}+\cdots\)
・括弧がない無限級数では、部分和を括弧のつけ方で場合分けして発散か収束かを判断
☆全パターン同じ値に収束 → その値に収束
☆パターンによって別の値に収束 → 発散
(詳細は【講義4】無限級数の収束条件・発散条件を参照)
括弧で1セットと考えることができるので、本問は

のような塊で考えることができる。
無限級数の1項目~\(\small k\)項目までの部分和を\(\small S_k\)とすると
\begin{split}
\small S_k &\small =\left(1-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{3}{4}\right)+\cdots+\frac{2(k-1)-1}{2(k-1)}-\frac{2k-1}{2k}\\
&\small =1-\frac{2k-1}{2k}\\
\end{split}
(間の項はドミノ式に消える)。
よって、求める無限級数は\(\small \displaystyle \lim_{k\to\infty} S_k\)なので、
\begin{split}
\small \lim_{k\to\infty}S_k &\small = \lim_{k\to\infty}\left(1-\frac{2k-1}{2k}\right)\\
&\small = 1-1\\
&\small = 0\\
\end{split}
よって、無限級数は\(\small 0\)に収束する…【答】。
(1)との違いは括弧がないこと。括弧がない場合は、勝手に複数の項をひとまとまりで考えるのはNGという点に注意!
$$\small S=1-1+1-1+\cdots$$
という無限級数を考えてみよう。
もし仮に好き勝手に括弧を付けてよいとした場合、
$$\small S=(1-1)+(1-1)+\cdots=0$$
や、
$$\small S=1+(-1+1)+(-1+1)+\cdots=1$$
となり、括弧のつけ方で計算結果が変わってしまう。
このような事態を防ぐため、括弧は勝手につけるのではなく、括弧のつけ方で場合分けして計算することが大事である。
本問の場合、括弧のつけ方は
\begin{split}
\small ①:\space &\small \left(1-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{3}{4}\right)+\left(\frac{3}{4}-\frac{5}{6}\right)+\cdots\\
\small ②:\space &\small 1+\left(-\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\right)+\left(-\frac{3}{4}+\frac{3}{4}\right)+\left(-\frac{5}{6}+\frac{5}{6}\right)+\cdots \\
\end{split}
の2パターンあるので、それぞれのパターンごとに部分和を求めていこう。
①は(1)の問題と同じなので、収束値は\(\small 0\)…①。
②の部分和は
\begin{split}
\small S_k &\small =1+\left(-\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\right)+\cdots+\left(-\frac{2k-3}{2k-2}+\frac{2k-3}{2k-2}\right)\\
& \small =1+0+\cdots+0\\
& \small =1\\
\end{split}
よって、\(\small \displaystyle \lim_{k\to\infty}S_k=1\)なので、無限級数の収束値は\(\small 1\)…②。
①、②より、結果をまとめると無限級数\(\small S\)の値は、
\begin{split}
\small S=
\begin{cases}
\small 0\space (\mathbf{項数:偶数個})\\
\small 1\space (\mathbf{項数:奇数個})\\
\end{cases}
\end{split}
となり収束値が一致しないため、無限級数は発散する…【答】。
【問題3】三角関数を含む無限級数(難易度:★★☆)
無限級数 \(\small \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \left(\frac{1}{5^n}\cos n\pi+\frac{1}{7^n}\sin \frac{n\pi}{2}\right)\)の和を求めよ。 [類 近畿大]
$$\small \sum_{n=0}^\infty ax^n=\color{#ef5350}{\frac{a}{1-x}}$$
に収束する。
・三角関数は周期性を利用して数値化すべし!
第1項目 \(\small \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \left(\frac{1}{5^n}\cos n\pi\right)\)から考える。
\begin{split}
\small \cos n \pi=
\begin{cases}
\small 1\quad (n:\mathbf{偶数})\\
\small -1\space (n:\mathbf{奇数})\\
\end{cases}
\end{split}
より、\(\small \cos n\pi =(-1)^n\)。
よって、 (第1項目)\(\small =\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \left(-\frac{1}{5}\right)^n=\frac{1}{1-\left(-\dfrac{1}{5}\right)}=\frac{5}{6}\)…①。
続いて第2項目 \(\small \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \left(\frac{1}{7^n}\sin \frac{n\pi}{2}\right)\)を考える。
\begin{split}
\small \displaystyle \sin \frac{n\pi}{2}=
\begin{cases}
\small 0\quad (n=0,2,4,6,\cdots)\\
\small 1\quad (n=1,5,9,13,\cdots)\\
\small -1\space (n=3,7,11,15,\cdots)\\
\end{cases}
\end{split}
であることから、\(\small n\)が偶数項は0なので、
\begin{split}
\small \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \left(\frac{1}{7^n}\sin \frac{n\pi}{2}\right) &\small =\left(\frac{1}{7}+\frac{1}{7^5}+\frac{1}{7^9}+\cdots\right)\\
&\small \quad -\left(\frac{1}{7^3}+\frac{1}{7^7}+\frac{1}{7^{11}}+\cdots\right)\\
&\small =\frac{\dfrac{1}{7}}{1-\dfrac{1}{7^4}}-\frac{\dfrac{1}{7^3}}{1-\dfrac{1}{7^4}}\\
&\small =\frac{\dfrac{7^2-1}{7^3}}{\dfrac{7^4-1}{7^4}}\\
&\small =\dfrac{7(7^2-1)}{7^4-1}\\
&\small =\dfrac{7(7^2-1)}{(7^2+1)(7^2-1)}\\
&\small =\dfrac{7}{50}\quad \cdots②\\
\end{split}
よって、求める無限級数の和は、①+②より、
\begin{split}
&\small \sum_{n=0}^{\infty} \left(\frac{1}{5^n}\cos n\pi+\frac{1}{7^n}\sin \frac{n\pi}{2}\right)\\
&\small =\frac{5}{6}+\frac{7}{50}\\
&\small =\color{red}{\frac{73}{75}\cdots【答】}
\end{split}
【問題4】無限等比級数の収束条件(難易度:★★★)
無限級数 \(\small \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} nx^{n-1}\)の収束、発散を調べ、収束する場合はその和を求めよ。ただし、\(\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}nx^n = 0 \space (|x|<1)\)を用いてもよい。 [類 芝浦工大]
・無限級数\(\small \displaystyle S=\sum_{n=0}^\infty a_n\)の発散条件は、\(\small S=\pm \infty\)以外にも、\(\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}a_n \neq 0\)も忘れない!
(詳細は【講義4】無限級数の収束条件・発散条件を参照)
部分和を\(\small \displaystyle S_k=\sum_{n=1}^k n x^{n-1}\)とする。
感覚をつかむために具体的に部分和を書き下してみると、
\begin{split}
&\small S_k=1+2x+3x^2+\cdots+(k-1)x^{k-2}+kx^{k-1} \quad \cdots①\\
\end{split}
ここで、①の両辺を\(\small x\)倍した式を考えると(唐突( ゚Д゚)!?)
\begin{split}
&\small xS_k=x+2x^2+3x^3+\cdots+(k-1)x^{k-1}+kx^{k} \quad \cdots②\\
\end{split}
①-②をすると、下記のように赤枠部分を引き算した結果、\(\small x\)の係数が1になるので

\begin{split}
&\small (1-x)S_k =1+x+x^2+x^3+\cdots+x^{k-1}-kx^{k}\\
\end{split}
(公比\(\small x\)の等比数列の形にするための式変形だったワケですね!)
\(\small x \neq 1\)の場合、\(\small \displaystyle 1+x+x^2+x^3+\cdots+x^{k-1}=\frac{1-x^k}{1-x}\)(等比数列の和)なので、
\begin{split}
&\small S_k =\frac{1-x^k}{(1-x)^2}-\frac{kx^{k}}{1-x}\\
\end{split}
求める無限級数の和の収束・発散を考えるためには、部分和の極限 \(\small \displaystyle \lim_{k\to\infty} S_k\)、すなわち
\begin{split}
&\small \displaystyle \lim_{k\to\infty}\left[ \frac{1-x^k}{(1-x)^2}-\frac{kx^{k}}{1-x} \right]\quad \cdots③\\
\end{split}
の収束・発散を考えればよいだろう。
さらにいうと、\(\small k\)に関連する部分である \(\small \displaystyle \lim_{k\to\infty} x^k\)と\(\small \displaystyle \lim_{k\to\infty} kx^k\)の収束・発散を考えればよい(他の部分は定数なので極限に関係ないから)。
これら2つの極限の収束条件は、\(\small |x|<1\)であり、
\begin{split}
&\small \displaystyle \lim_{k\to\infty} x^k = 0\\
&\small \displaystyle \lim_{k\to\infty} kx^k = 0\\
\end{split}
よって、無限級数の和は③より
\begin{split}
&\small \displaystyle \lim_{k\to\infty}\left[ \frac{1-x^k}{(1-x)^2}-\frac{kx^{k}}{1-x} \right]\\
&\small \qquad =\displaystyle \frac{1-0}{(1-x)^2}-0\\
&\small \qquad=\displaystyle \frac{1}{(1-x)^2}\quad \cdots④\\
\end{split}
一方、\(\small |x|≧1\)の場合は発散するわけだが、ここの論証が若干面倒。順番に確認していこう。
[1] \(\small x>1\)の場合
③の式をもとに考えようとすると、
\begin{split}
&\small \displaystyle \lim_{k\to\infty} x^k = \infty\\
&\small \displaystyle \lim_{k\to\infty} kx^k >\lim_{k\to\infty} k = \infty\\
\end{split}
なので、
\begin{split}
&\small \displaystyle \lim_{k\to\infty}\left[ \frac{1-x^k}{(1-x)^2}-\frac{kx^{k}}{1-x} \right]\\
&\small \qquad = -\infty+\infty\space (1-x<0のため第2項目の符号は+になる)\\
&\small \qquad =(\mathbf{不定形})
\end{split}
となり、うまく発散を示せない。
このような場合は、シンプルに無限級数の第\(\small n\)項目が\(\small n\to\infty\)で0に収束しないことを示せばよい。
すると、
\begin{split}
&\small \displaystyle \color{#ef5350}{\lim_{n\to\infty}nx^{n-1}> \lim_{n\to\infty}n }=\infty\\
\end{split}
となりゼロに収束しないことから無限級数の和は発散する…⑤。
採点者によっては自明ではない極限を証明なしに使用すると論理の飛躍と判断されて減点対象となる可能性がある。
本問であれば、
\begin{split}
&\small x>1\\
&\small x^{n-1}>1\\
&\small nx^{n-1}>n \space (n>0)\\
&\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}nx^{n-1}> \lim_{n\to\infty}n\\
\end{split}
としたうえで、\(\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}n=\infty\)から示すのがよいだろう。
[2] \(\small x≦-1\)の場合
同様に、無限級数の第\(\small n\)項目に着目すると
\begin{split}
&\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}nx^{n-1}≦\lim_{n\to\infty}n\cdot (-1)^{n-1}\\
&\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}|nx^{n-1}|≧\lim_{n\to\infty}|n\cdot (-1)^{n-1}|\\
&\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}|nx^{n-1}|≧\lim_{n\to\infty}|n|\\
\end{split}
となり、右辺は\(\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}|n|=\infty\)となるため、無限級数の和は発散する…⑥。
[3] \(\small x=1\)の場合
\begin{split}
&\small \displaystyle \lim_{n\to\infty}n\cdot 1^{n-1}=\infty\\
\end{split}
より、0に収束しないため、無限級数の和は発散する…⑦。
よって、⑤~⑦より、\(\small |x|≧1\)の場合、無限級数の和は発散する。
最後に結果をまとめると…、\(\small |x|<1\)のとき、無限級数の和は\(\small \displaystyle \frac{1}{(1-x)^2}\)に収束し、\(\small |x|≧1\)の場合、発散する…【答】。
【徹底解説】無限級数の和の求め方
【講義1】無限級数ってなに?
そもそもタイトルにある「無限級数」って何でしょう?
そう聞かれるとよくわからん…という人も多いはず。なのではじめに意味の解説をしておきます。
数式で表現するなら
$$\small \displaystyle \sum_{n=1}^\infty a_n=a_1+a_2+a_3+\cdots$$
ちなみに、足し算と言いつつも、「\(\small 1+(-2)\)」のような足し算もOKなので、実質引き算も含まれます。
ちなみに、級数という用語は、英語だとseries(シリーズ)なので、無限に続くシリーズものみたいなイメージなのかな。
なので、無限級数とは、足し算、引き算が無限に続く式だって覚えておけば十分でしょう。
【講義2】無限級数で部分和を考える理由
無限級数を求めるときに絶対出てくるのが部分和。
正直、この部分和って最終的に無限大の極限とるのに、なんで考えるの?と疑問に思っている人もいると思うので、ここで考え方を確認しておきましょう。
そもそも「無限」という概念は非常に曖昧なもので、時として人間の直感とかけ離れていることも多々あるんですね。
例として、次の問題を考えてみましょう。
●思考問題
自然数と偶数はどちらの方が多いでしょう?
もちろん、自然数に決まってるじゃん…と思ったそこのあなた、これが無限が直感に反するといった理由です。
実は答えは、自然数も偶数も同じ数ずつ存在します。そんなワケないじゃん!?と思った人向けに、簡単な解説を載せておきます。
≪思考問題 解説≫
自然数の集合を\(\small N\)、偶数の集合を\(\small E\)とする。
各集合の要素を具体的に書き出すと
\begin{split}
&\small N=\{1,2,3,4,5,6,7,8,\cdots\}\\
&\small E=\{2,4,6,8,10,12,14,16,\cdots\}\\
\end{split}
集合\(\small N\)の各要素を2倍しても要素の個数自体は変わらないので、その集合を\(\small N’\)とすると
\begin{split}
&\small \color{#ef5350}{N’=\{2,4,6,8,10,12,14,16,\cdots\}}\\
&\small E=\{2,4,6,8,10,12,14,16,\cdots\}\\
\end{split}
\(\small N’\)は偶数の集合\(\small E\)と一致するので、その個数も同じである。
よって、自然数と偶数の個数は同じである。
どうでしょう?論証自体は分かったけど、なんだが直感に反していて騙されているような感じがしますよね?
さらにいうと、この論法を使えば、自然数と3の倍数の個数や100の倍数の個数などもすべて同じ個数だということが証明できます(ますます直感に反する…)。
なんでこんなことが起こるのかというと、私たち人間の身の回りのものは、基本的に有限個のものに囲まれているので、ついつい有限の世界での直感が働いてしまうんですね。
思考問題も、自然数や偶数は無限個あるので話がややこしくなるわけですが、例えば、1~10までの自然数と偶数はどちらが多いか?という有限個の比較にしてあげれば、当然答えは自然数の方が多いという直感と一致した答えになります。
だいぶ話が脱線しましたが…、つまり、ここで言いたかったことは、「無限を考えるのは意外と難しい!」ということ。
なので、無限級数のような無限個の足し算は、普段私たちがやっている有限個の足し算の直感に反することもあるかもなので、一旦1~\(\small k\)番目までの部分的な和を求めてあげて、\(\small k\to\infty\)の極限をとってあげれば安心だよね、という考え方で、まずは部分和を求めるわけです。
【講義3】部分分数分解(分数の無限級数)
問題1にあるような分数型の無限級数では、1つの分数を複数の分数に分解して共通項を打ち消すという解き方が定石です。このときに利用する必須のテクニックが部分分数分解です。
ここでは部分分数分解の方法について2通りの方法を解説していきます。
問題1にある\(\small \displaystyle \frac{1}{n^2-1}\)の部分分数分解を考えます。
≪方法1:地道に計算する方法≫
\begin{split}
\small \frac{1}{n^2-1} &\small =\frac{1}{(n-1)(n+1)}\\
&\small =\frac{a}{n-1}+\frac{b}{n+1}\\
\end{split}
のように分母の積ごとに分数を分解します。あとは、等式が成り立つようにうまく\(\small a、b\)を決めてあげます。
●定数\(\small a、b\)の決め方
\begin{split}
\small \frac{a}{n-1}+\frac{b}{n+1} & \small =\frac{a(n+1)+b(n-1)}{(n-1)(n+1)}\\
& \small =\frac{(a+b)n+(a-b)}{(n-1)(n+1)}\\
\end{split}
これが\(\small \displaystyle \frac{1}{(n-1)(n+1)}\)と一致することから、分子同士を比較して
\begin{split}
& \small (a+b)n+(a-b)=1\\
\end{split}
という恒等式が成り立ちます。
よって、
\begin{split}
\begin{cases}
\small a+b=0 \space ◀n\mathbf{の係数比較}\\
\small a-b=1 \space ◀\mathbf{定数項の係数比較}\\
\end{cases}\\
\small \Rightarrow \space a=\frac{1}{2}, \space b=-\frac{1}{2}\\
\end{split}
よって、
\begin{split}
\small \frac{1}{n^2-1} &\small =\frac{1}{2}\frac{1}{n-1}-\frac{1}{2}\frac{1}{n+1}\\
&\small =\frac{1}{2}\left(\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n+1}\right)\\
\end{split}
と部分分数分解できます。
≪方法2:感覚的に部分分数分解する方法≫
\(\small \displaystyle \frac{1}{(n-1)(n+1)}\)を\(\small \displaystyle \frac{●}{n-1}+\frac{■}{n+1}\)みたいな形に分解できることを念頭に置きつつ、分子が1になっていることから、通分したときに\(\small n\)の項が消えないといけないので、\(\small \displaystyle \frac{1}{n-1}-\frac{1}{n+1}\)のような引き算の形になっている必要があることが分かります。
ちなみに、分解前の分数が正の値であることから、引き算の順番も「(大)ー(小)」になる必要があるので、分母が小さい方(=値としては大きくなる)から分母が大きい方を引き算する順番にしています。
試しにこれを通分してみると、
\begin{split}
\small \frac{1}{n-1}-\frac{1}{n+1}=\frac{2}{(n-1)(n+1)}\\
\end{split}
となり、分解前と比較すると分子の2だけがずれているので、全体を\(\small \displaystyle \frac{1}{2}\)倍してあげれば、
\begin{split}
\small \frac{1}{2}\left(\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n+1}\right)=\frac{1}{(n-1)(n+1)}\\
\end{split}
となり部分分数分解完了です。
慣れてきたら感覚的に分解する方が楽ですし素早くできるので、この方法がおすすめです。
【講義4】無限級数の収束条件・発散条件
収束条件のポイントは、部分和\(\small \displaystyle S_k=\sum_{n=1}^k a_n\)が\(\small k \to \infty\)で特定の1つの値に定まることです。裏を返すと、無限大の極限をとったときに、2つ以上の値になり得る場合は、収束とは言えないことに注意しましょう。
・部分和の極限が\(\small \pm \infty\)になること。
・部分和の極限が1つの値に定まらないこと。
・\(\small \displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n \neq 0\)となること。
発散条件には3通りの考え方があります。どれかに該当すれば発散になります。
1つ目、2つ目は収束条件の逆パターンで、部分和\(\small \displaystyle S_k=\sum_{n=1}^k a_n\)が\(\small k \to \infty\)で発散する場合は、無限級数の和も発散します。発散には、極限が\(\small \pm \infty\)になる以外にも、振動パターン(1つの値に定まらない)も含まれます。つまり、特定の1つの値にならない=発散ということです。
もう一つが、足し算の第\(\small n\)項目が\(\small n \to \infty\)で0に収束しない場合です。無限級数の和=無限項の足し算なので、仮に無限項目が0にならないのであれば、その和はどんどん増える一方です。そのため、収束するには無限項目が0に収束している必要があるわけです。
●補足
第\(\small n\)項目の極限が0になるからと言って無限級数が収束するわけではないので注意!チリツモで和としては発散する可能性あり。
有名な例では、調和数列の無限和
$$\small \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots $$
は、\(\small \displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{1}{n}=0\)ですが、無限和としては発散することが知らています。
本記事のまとめ
今回は無限級数の計算問題について、基本的な考え方から入試レベルの実践的な問題まで解説してみました。本記事の要点を最後に改めて確認しておきましょう。
☆重要Point☆
・無限級数の計算は、部分和の極限として考えろ!
・無限級数の収束条件は、部分和の極限が特定の1つの値に定まること。
・無限級数の発散条件は、①部分和の極限が無限大、②部分和が1つの値に定まらない、③無限項目が0にならない。
ここで学んだ考え方を活かして、是非いろいろな問題にチャレンジしてみましょう!
今回はここまでです。最後まで確認いただきありがとうございます!お疲れさまでした!
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