今回は、判別式を使って解の個数を判定する公式について説明していきます。
はじめに
この記事では、数学で挫折してしまう人の多くが悩みとして抱えている「公式が多すぎて覚えられない…」という悩みに対して、公式を極力覚えなくてもよい方法を伝授します。結論、覚える量を減らすために重要なことは以下3つです。
- 公式を丸暗記しない
- 公式を忘れたとしても導けるようにする
- 覚える部分と覚えない部分を見極める
多くの公式は覚えなくても、少し考えれば導けます。なので、公式を導くために必要な最低限の知識だけ覚えておけばOKです。これだけでも覚える量が減ってだいぶ楽になると思います。
また、公式の中には覚えなくてはいけない公式と覚えてはいけない公式の2種類があります。
覚えなくてはいけない公式とは、式を導くのに時間がかかるものや導く方法自体が難しいものです。そのような公式は逆に公式だけ覚えてしまった方が効率的です。
一方で覚えてはいけない公式とはその逆で、導くことが簡単で理解してしまえば当たり前すぎてあえて公式化する必要がないものです。簡単に導けるようなものは、結果ではなく根幹の知識だけ理解しておけばOKというわけです。
では、今回も覚える公式を減らしていきましょう!
★本記事で扱う公式
判別式と解の個数の公式
$$D=b^2-4ac$$ と定義する。この時、判別式\(\small D\)の値によって2次方程式の解の個数は以下の通りとなる。
★判別式と解の個数の関係
\(\small D>0\)の場合、2個、
\(\small D=0\)の場合、1個、
\(\small D<0\)の場合、0個。
公式のスペック
★公式の解説
判別式で押さえるべきポイント
結論、判別式の公式は覚えなくて大丈夫です。
実は、次のポイントだけ抑えておけば自然と理解できます。
■これだけは覚えろ
判別式\(\small D\)=解の公式のルート部分
では、この結論をもとに具体的にこれだけ覚えれば大丈夫な理由を説明していきますので、ぜひ最後まで頑張っていきましょう!
判別式で解の個数が分かる理由
★判別式と解の個数の関係
\(\small D>0\)の場合、2個、
\(\small D=0\)の場合、1個、
\(\small D<0\)の場合、0個。
判別式が\(\small D=b^2-4ac\)なのは知ってるけど、判別式の符号によって解の個数が分かる理由は意外と忘れてしまっている人も多いのではないでしょうか?
理由の部分をしっかり理解できれば、判別式と解の個数の関係を覚えていなくても簡単に導き出すことができます。
判別式=解の公式のルート部分
ところで、皆さんに質問です。
判別式
$$D=b^2-4ac$$
ですが、この形どこかで見覚えないでしょうか?
実は、2次方程式の解の公式に登場しています。
\(\small a\neq 0 \)として、2次方程式\(\small ax^2+bx+c=0\)の解は $$x=\frac{-b \pm \sqrt{\color{red}{b^2-4ac}}}{2a}$$
解の公式の赤字箇所、つまりルートの中身が判別式そのものなんです。
そして、冒頭にもお伝えした結論は、判別式がルート部分だということだけ覚えておけばokということなんです。
■これだけは覚えろ(2回目…)
判別式\(\small D\)=解の公式のルート部分
ルートの中身と解の個数の関係性
解の公式のルートの中身が2次方程式の解の個数とどう関係しているのか?それは、ズバリ
ルートの中身がプラスなら解が2個、
ルートの中身が「0」なら解は1個、
ルートの中身がマイナスなら解なし
ということです。
ルートの中身がプラスなら解が2個なワケ
例えば2次方程式の解が
$$x=\frac{-1 \pm \sqrt{\color{red}{3}}}{2}$$
のようにルートの中身がプラスだったとしましょう。すると、解の個数は、\(\small \frac{-1 \color{red}{+ \sqrt{3}}}{2}\)と\(\small \frac{-1 \color{red}{-\sqrt{3}}}{2}\)の2個です。
つまり、ルートの中身がプラスだと、解の公式のルートの直前にある「\(\small \pm\)」が効いて解が2個になるワケです。
なので、判別式\(\small D\)がプラスの時は解の個数が2個という判定になります。
ルートの中身が0なら解が1個なワケ
同様にルートの中身が0の場合は、例えば
$$x=\frac{-1 \pm \sqrt{\color{red}{0}}}{2}=-\frac{1}{2}$$
のような解になるので、解の個数は1個になります。ルートの直前にある「\(\small \pm\)」の後が「0」になることで「+0」も「-0」も結果同じだ!となってしまうわけです。
余談ですが、計算の結果2つの解が同じ値に重なるので、これを重解というわけです。セットで覚えておきましょう。
ルートの中身がマイナスなら解が0個なワケ
最後はルートの中身がマイナスの場合ですが、これはあえて書くなら
$$x=\frac{-1 \pm \sqrt{\color{red}{-5}}}{2}$$
みたいな明らかに変な状況です。「ルートの中身はマイナスにならない!だって2乗してマイナスになる数なんてないじゃん?」と習ったわけです。なので、これはそもそも論で、解がないため0個になります。
■補足:虚数の世界まで考えるなら解の個数は2個になる
この話は数学IIで出てくる話なので、まだ学習してない人は読み飛ばしてもOKです。
一応誰でもわかるように書いているので興味がある人は読んでみてください!
ルートの中身がマイナスなら解が0個というのは厳密にいうと△です。
理由は「どの範囲までを解と捉えるか曖昧だから」です。具体的には、
解と一口に言っても実数解と虚数解があります。虚数は2乗すると
マイナスになる数も考えようぜというノリで作られた数です。
で、どの範囲までを解と捉えるかを虚数解も解とみなすのであれば、
ルートの中身がマイナスでも解の個数は2個になるということです。
$$x=\frac{-1 \pm \sqrt{\color{red}{5}}\color{red}i}{2}$$
\(\small i\)が虚数で、\(\small i^2=-1\)となるような数です。
なので、判別式で\(\small D<0\)の時は、「実数解の個数は0個」と
考えている解の範囲を明記してあげるのが大事です。
まとめ
今回は判別式と解の個数の関係性について、「公式は覚えなくてよい」、「判別式=解の公式のルート部分」という結論をもとに解説していきましたがいかがでしたか?
これだけ覚えておけば、例えば\(\small D>0\)と計算で分かったときに、「ということは、解の公式でいるところのルートの中身がプラスということだから、\(\small \pm\)が効いてきて解は2個になるな」と自然に考えられると思います。
逆に、実数解が1個になる条件を見たならば、「解の個数の話しているから判別式使えそうだぞ。解の個数が1つになるってことは\(\small \pm\)の効果が消えればいいからルートの中身が0になってればいいな、だから\(\small D=0\)」と分かるわけです。
こんな風に考えられるようになったら、もう判別式はマスターしたと思ってもらってokなので、いろいろな演習問題を解くときに今回のことを思い出して解き進めるとよいと思います。
演習問題については、「判別式の使い方」の記事でも紹介しているので併せて読んでみてください!
今回は以上です。お疲れさまでした!